アニメスター訪問『富山敬』
「声の仕事はたのしいもので、二枚目、三枚目を選ばずいろんな役がやれるんです。四十すぎて、未だに二枚目少年を演れますものね(笑)」◇声優ブームの中心的存在だが、かけだしの頃は金のない生活をしたという
「芝居というのは、およそ金に縁がないもので、食うためにいろんなことをやりました。バーテン、ボーイ、サンドイッチマン、カウンターマンとかね」
◇誤解をしてもらっては困るのだが、「昔は辛かった」的な口調ではない。じつにアッサリと、たのしそうに話してくれるのである。ちょっと浮世のゴタゴタとはかけ離れているのね。なにごとにつけても「マイペース」といううらやましい生き方なのだ。だから、アニメブーム、声優ブームとさわがれても決してドタバタしない。「アニメスターって、ぼくはスターじゃないですヨ。ぼくたちは、歌い手さんやいわゆるスターの人たちみたいな感覚をもってませんものね。今のブームだって、キャラクターから派生したんじゃないですか?その声をアテてるのでぼくたちが、つきあってみたら気軽な人たちばかりなんで、今度は人間としての声優を応援してくれるようになった……っていうのかなァ。」
◇もちろん、ファンの応援にはせいいっぱい答えている。そのひとつがレコード。「富山敬ロマン」「富山敬マイセルフ」という二枚のアルバムが発売されているのだ。
「歌うことはすきですけど、まさかレコード出すとは思ってなかったんですよ。語りならともかく、歌は聞けたもんじゃないですよ、っていってたんだけど、キングレコードの小川卓ディレクターに『敬さんの歌だからみんな聞きたいんですよ』と説得されましてね。それじゃあ、ということで受けたんです。」
現在の人気を利用して……なんていうことはまったく考えてない人みたい。これが新人歌手ならもっと欲を出せとハッパをかけられちゃう。ドン臭さのない、いい意味での"シティーライフ"を感じた。
◇話は変わるが、現在バカウケ放送中の「タイムパトロール隊・オタスケマン」には「オタスケ教室」なるコーナーがある。ファンのみんなは知っていると思うけど、このコーナーの主役はトミー教官なる人物――ズバリ、富山さんをアニメライズしたキャラクターなのだ。「タイムボカン、ヤッターマン、ゼンダマン、オタスケマンと5年間続けてますからね。スタッフの方たちともすっかりオナジミになってるわけです。小原(乃梨子)さんや八奈見(乗児)さんたちなんか、自分のキャラクターのセル画をもらってるんですよ。ところがぼくはナレーターでセルがない。冗談でセル欲しいっていったら、ホントに画ができちゃったんですよ。たぶん、マンガになりやすいカオなんでしょう(笑)。」
ほんと、そっくりなのよね!取材当日はちょうど「オタスケマン」レコーディングの日で、見学させてもらったんだけど、スクリーンとマイクの前の富山さんを見くらべて、思わずフキ出してしまったもの!
◇とはいえ、富山さんがギャグ人間だと思われては困る。当人はいたってクール。あえてシリアスとはいわないが、常に自分というものを見つめている感じだ。インタビューの最後でこう語ってくれた――。 「いつも逃げないで、ぶつかってそれを乗りこえる――とてもすばらしいことです。」 あせらずに、1歩1歩ふみしめていつもマイウェイ。そんな"青年"の生き方を、富山さんに見たような気がした。