石黒昇・小原乃梨子著『テレビ・アニメ最前線-私説・アニメ17年史』  捨吉さんより

●声優のいるアニメ史2『タイムボカンシリーズ』小原乃梨子

(前略)
この番組で、八奈見氏が天才ならもう一人の天才を忘れたら大変、天才トミボンこと富山敬氏。
『宇宙戦艦ヤマト』の古代進で社会現象とも言えるアニメブームの火付け役となった彼も、天下の二枚目は、世を偲ぶ仮の姿で、ナポレオンじゃないけど彼のキャラクターに不可能という言葉はないというくらいの天才。猫、犬、サル、オーム、おじいさん、おばあさん、なんでもござれ、まさに奇跡の人。天才富山、略して天トミ!というわけなのだ。

さらに彼の歌がまたすばらしい。最近ではLPを何枚も出しているほどの本格派で、作曲家の服部良一氏にロマンティック・バリトンと折紙をつけられたくらいだから、俳優の余技とは言えない立派なものだ。

タイムボカン・シリーズでは、ナレーターといろいろな登場人物を、チョイチィとやってのけ、涼しい顔をしているけど、実生活ではすてきな奥様とかわいい絵麻ちゃん、それに元気な双生児の坊や達に囲まれたやさしいパパ、声優人気NO1にふさわしいさわやかな敬さんだ。(後略)

●『TVアニメ録音風景』小原乃梨子

さて、このへんで一体アニメの三十分番組は、どんな風に録音されるのか、『ゼンダマン』を例にとってのべてみよう。
ある月曜日の午後四時、東京赤坂はTBSに程近い新坂スタジオに出演者一同が集まる。(中略)
ともかくすべてが終わり、富山敬氏の来週の予告の一分ゲーム、これは、テストなしのぶっつけ本番でピタリと58秒におさめる神業があってこの日の仕事が終了。午後八時三十分。